クラミジア検査結果の読み方
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2012年1月18日更新
ク ラミジア・トラコマティスを検出する方法には大きく分けてクラミジアの遺伝子を証明する方法と、クラミジアが感染して体内で起こった反応の強さで感染の有 無を推測する方法の二通りがあります。どちらも非常に優れた方法ですが、検査結果の読み方には少しだけ知識が必要です。とはいえたいした知識ではありませ んから、ぜひ覚えていただきたいと思います。
クラミジアの遺伝子を証明する方法
専門的には抗原検出法というカテゴリーに分類される検査です。抗原とは「病原菌そのもの」のことです。歴史的にはいろいろな方法がありますが、現時点で著者が推奨するのはSDA法とPCR法です。なぜならPCR法は他の方法と比べて圧倒的に検出感度がいいからです。
クラミジア・トラコマティス抗体検査法と検出感度
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検査法
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SDA/PCR法
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IDEIA法
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クラミジアザイム
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DNAプローブ法
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蛍光抗体法
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必要な菌体数
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1〜50
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500〜1000
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10000以上
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7500以上
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幸運を祈る
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長所
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感度が高い
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安価
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安価
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淋菌も検出可
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結果がすぐ出る
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欠点
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死菌も検出
効果判定には不向き |
別のクラミジアと区別できない
効果判定に不向き |
臨床的に無意味
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臨床的に無意味
改良によって復活? |
臨床的に無意味
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必要な菌体数とは、検査が陽性になるために必要な病原菌の数です。検査する条件によってもばらつきがありますのであくまでも目安です。最近急速に普及してきた郵送による検査を利用すときは、 感度が低過ぎて臨床的に無意味な検査もありますので、 検査方法をよく調べて、臨床的に意味のある検査を選んでください。 |
PCR法は感度が高く検体の中に菌のDNAが10個以下でも検出が可能です。PCR法は遺伝子の一部をコピーすることで感度を高めているからです。です から、コピーがうまく作れなくては感度が落ちてしまいます。コピーを作るときの技術がなかなか難しいので、PCR法はほかのDNAなどの阻害物質があると うまくコピーができません。必要な菌体数を多めに表記したのはそのためです。それでも他の検査方法に比べると100倍以上感度がいいのですから、臨床的に 通用する品質としてはPCR法と、IDEIA法がせいぜいというところで、他は検査をして「陽性」ならば意味があるけれども、「陰性」では安心ができないということになります。一部検査では改良が進み、感度が飛躍的に伸びたとも聞いていますが、PCR法と同等かそれ以上の検査はまだまだできていません。
血液で推定する方法 クラミジアは感染してからしばらくすると自覚症状を消してしまい、感染がどこにあるのかわからない場合があります。また、体の奥へ奥へと進んでいきます から、感染した時期によって検査した場所にはクラミジアがいない場合もよくあります。「検査をしたのに何もなかった。」それで安心していて良いのででしょ うか。いいわけけないですよね。感染してしばらく時間が開いてしまった場合や、いつ感染したのか良く覚えていない場合などには前述の抗原検査ではわからな いことがありますので、血中の抗原を検査することをお勧めします。
血中抗体検査とは、体内に病原菌が入って、体が病原体を戦うために免疫グロブリンを作ります。免疫グロブリンには 下のようにいろいろな種類があって、その組み合わせによって感染の状態とか、感染してからの時間を推定します。あくまでも推定ですから、書いてあるとおりだとは断言はできませんので、参考値程度だとお考えください。
血中抗体のタイプ
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IgA
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IgG
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IgM
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効果判定
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病原体の活動性
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感染してからの時間
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より早い時期の感染
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–
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–
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新生児の感染症判定に使う。 |
感染はない*
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+
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–
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早期の感染**
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–
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+
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感染の履歴***
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+
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+
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慢性の感染****
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* IgAもIgGも陰性の場合。感染は否定的。しかし抗原検査が陽性ならそちらが優先される。
** IgA陽性でIgGが陰性の場合。感染しているが時間があまり経っていないと推定する。
*** IgA が陰性でIgGが陽性の場合。 過去に感染があったが今は病原菌は活発に活動していない状態。「感染の履歴」と考え、急いで治療する必要はない。しかし抗 原検査が陽性ならそちらが優先される。過去にちゃんとした治療を受けていなければ感染を100%否定することはできない。 ****過去に感染して、今も菌が活発である状態。前立腺炎などの慢性的な状態。パートナーとお互いに繰り返し感染をしあっていたことを推測する。 |
おおむね上記のようは判定をしますが、臨床的な意味は治療効果の判定にあります。治療前と治療後で血中抗体のOD値(検査信頼率の指標)を比較します。治療後に検査結果がたとえプラスであってもOD値が横ばいか、下がっていれば治療効果がある程度あったと推察します。逆にOD値が上がっている場合にはまだまだ治療が不十分だったと考えます。
検査が陰性だった時の考え方 前述のように、臨床検査はいろいろな意味を持っていて、陽性だから病気があって陰性だと病気に感染していないと思われがちですが、実際の検査の細かい意味を知るほど、検査にべったりと頼っていてはいけないことが良くわかります。
検査は、陽性だったら検査した場所に病原体があったと納得できますが、一方でもしも検査が陰性だったとしても、「その場所で陰性だった」とか、「検査した場所には病原体がいなかった」という程度であって、決して「感染が体中のどこにもない」ことを保障するものではないことを良くご理解願いたいと存じます。医師は感染したときの状況や臨床症状を基にして診断していますので、検査結果は絶対的なものではなく、診断の一助に過ぎません。保健所や郵送で検査が受けられて便利になりましたが、検査の意味と限界を知ってご利用になられてください。