クラミジアの治療に時間がかかる理由

投稿日:2010年6月8日|カテゴリ:バックナンバー
治療に時間がかかる理由
−その① 細胞内寄生
ク ラミジア・トラコマティス(ここでは単に「クラミジア」と書きます) は、自分では生活に必要なエネルギーを十分に作り出すことができません。ですから、人間に粘膜細胞の中に入り込み、寄生虫のように人間が作ったエネルギー で増殖します。抗生物質をまじめにのんでいても細胞の中まではなかなか行き届かないので、治療に時間がかかります。

−その② 細胞分裂周期が長い
ク ラミジアの細胞分裂周期は72時間前後と長く、しかも人間の細胞の中で細胞分裂しています。細胞の中で増殖するとその細胞を破壊してまた新しい細胞に寄生 して感染を広げます。このサイクルは3−4日に1度の周期で繰り返されます。抗生物質が最も効果的なのは細胞分裂の最終段階ですが、この時期がめぐってく るのに時間がかかることと、細胞の中に抗生物質が入りづらいことから、主に抗生物質が有効なのは細胞の外に出てきた時期です。治療に時間がかかります。そ のためクラミジアにはごく一部の限られた抗生物質しか効きません。

著者が東京都臨床衛生検査技師会中部地区研修会(2004年7月)のときに使用したスライドから引用
性器クラミジア感染症 治療の原則
<有効な抗生物質>
性器クラミジア感染症の治療にはテトラサイクリンン系・マクロライド系・ニューキノロン系の抗生物質が推奨されています。下に主な薬を列挙しました。これ らの薬は臨床でよく使われるものですが、たとえばニューキノロンであっても効果が期待できない薬も多いので性病の臨床経験が豊富なドクターに相談しましょ う。

主な薬
主な副作用
テトラサイクリン系
ミノマイシン・ビブラマイシン
めまい・光線過敏症
マクロライド系
クラリス・エリスロマイシン・ジョサマイシン
嘔吐・下痢・軟便・めまい
ニューキノロン系
ガチフロキサシン・トスフロキサシン
光線過敏症・耐糖能障害
これらの系統の薬でもクラミジアに対する効菌力が弱い(ほとんど期待できない)ものもあります。ミノマイシンやエリスロマイシン、ビブラマイシンには、メーカーによって吸収率が違うものがあり、効果にばらつきがあって安定していません。

当院では医師向けに「専門医のための尿道炎治療例」を公開しています。患者様向けではありませんので難しい用語がありますが、治療に迷ったらごらんください。