なぜ性病は蔓延するのか
投稿日:2010年6月8日|カテゴリ:基礎知識
●なぜ性病は蔓延するのか
先進国だけでなく、アジアの国々を見渡しても性病(STD)が増え続けているのは日本ぐらいです。なぜ日本では性病が野放しに増えているのでしょうか。若者 の性意識を責めることはできません。むしろ若い世代は性病のことをよく勉強している人が多く、パートナーを思いやる気持ちが旺盛だと著者は感じています。 性病蔓延の原因はむしろ医師の勉強不足、健康保険制度の限界、性教育のあり方、セックス産業などなど、多くのの問題があるからです。
|
||||||||
性病が蔓延する理由−その① 間違った情報の氾濫 | ||||||||
インターネット上にはさまざまな情報が載っています。しかしそのすべてが正しい情報であるとはいえません。特に医学的な専門知識を持たない読者には、情報の真偽を判断することは不可能と思えます。そのような状況で、間違えた、時には有害な情報がはびこっているのです。 インターネットの記事を読むときには、最低限著者がどこの誰なのかを明示してあるページ以外は信用してはいけません。あたかも公的なサイトのように見えて、商品の勧誘目的であったり、性病の有病率を何倍にも偽って恐怖を煽るようなサイトも目にします。 皆様に正しい情報をお伝えするためにこのサイトを開設しました。 | ||||||||
性病が蔓延する理由−その② パートナーの治療をしない | ||||||||
性病にかかってしまったことをパートナーに打ち明けることは、とても勇気のいることです。場合によっては二人の関係を損ねてしまうかもしれません。しかし、性病は患者様一人だけの病気ではありません。性病は性の環境汚染ですから、自分ひとりだけ治療しても、また感染しなおしてしまいます。何よりもパートナーを大切に思うなら、感染の有無を確認して、感染の可能性があるなら治療を受けてもらうことが必要です。(一部の性病は、日本では検査ができないものもあります。詳しくは「パートナーが性病にかかったとき」をお読みください。) | ||||||||
性病が蔓延する理由−その③ 症状がなくなると治療をやめてしまう | ||||||||
た いていの性病は感染してしばらくすると自覚症状がなくなってしまう特徴があります。また、症状が軽いために感染に気づかないこともよくあります。そして、 治療方法が間違えていたとしてもたいてい自覚症状が消えてしまうこともよくありますから、油断ができません。治療は最後まできちんと受けて、治療を終了す るかどうかの判断は、感染がなくなったことを再検査した上で主治医の指示に従ってください。 | ||||||||
性病が蔓延する理由−その④ コンドーム利用率の低下 | ||||||||
国会で「コンドームのつけ方をを学校で教えるのは行き過ぎだ」という質疑がされ、総理大臣も「コンドームのつけ方ぐらい教えなくても覚えるものだ」と答えていました。イギリスでは中学校の授業でコンドームの装着方法を教えるばかりではなく、女子生徒に「コンドームをつけないセックスを強要するのは、あなたを愛していないからだ」と教えている中学校があります(帰国留学生からの聴取)。オーストラリアでは州立大学の男子トイレやビーチの公衆トイレにコンドームの自動販売機が設置してあります。空港のトイレのドアには「Travel insurance from one dollar(1ドルからの旅行保険))」と題してコンドームのポスターが貼ってありました(2000年シドニー空港)。 日本では年々コンドームの出荷量が低下しています。それに反比例するように性病が蔓延している実態を、あなたはどのように理解されますか。
|
||||||||
性病が蔓延する理由−その⑤ 不確実な治療 | ||||||||
日 本性感染症学会では「性感染症 診断・治療ガイドライン」を発表して治療のレベルアップを図っています。しかし、実際の医療の現場でこのガイドラインがあ まり守られていないことは残念なことです。たとえば淋病の治療によく使われているニューキノロンとテトラサイクリンは、はっきりと「耐性率が80%前後」 と記載されています。効かない確率が80%の薬が実際にはもっとも頻繁に使われているのです。 臨床の最前線では一部ガイドラインに物足りなさも感じますが、とにかくこれが基本中の基本ですから、全国の医師がこぞってガイドラインを守って治療してくれれば性病の蔓延はありえないと思います。 |